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この木何の木 第一回 絹川 晴彦

市民の森ながの

この木何の木?? 第一回 絹川 晴彦

森を歩いていて大きな木に出会うと、この木は何の木だろう? 気になるものです。 私の場合はすぐに解る時もありますがむしろ解らない時のほうがはるかに多い。 後で気になって図鑑を引っ張り出して調べてみるもののなかなか難しい。 木は木であって名前なんか気にする事はないとは思うものの、やっぱり気になって再度現場へ出かける事も。 皆さんは如何ですか? 一目見て一発正解。おおらかな気持ちでこだわらない。等々。そこで今回は私なりの種の同定方法について書いてみたいと思います。

針葉樹林

今から約2~3億年前に繁栄を始めた裸子植物(針葉樹)はその後被子植物へ、さらに草本へと進化を続けているそうです。 現在地球上の針葉樹は温帯性気候北部を中心とした地域に約500種が分布していますが、広葉樹はなんと20万種もあるそうです。 近くの森を歩いていても針葉樹より広葉樹の方がはるかに多くの種を見るのもうなづけます。 広葉樹は似たような木が多く又、種数も多いことから難しいと言う理由で後回し。 先ずは北信地域の針葉樹の同定について始めてみたいと思いますが、はたして最後まで続くでしょうか?長野県林業総合センターの資料によると、針葉樹の種類は日本全体で38種、その内長野県は28種が生育し、 北信地域には21種が生育しているそうです。その21種の同定方法について4回に分けて掲載します。 植物図鑑片手にいろいろと調べても生育地域や個体差のため、判断に悩むことも多いものです。その中から私の独断と偏見による種の同定方法について書いてみます。 「少し変だな」とか「もっといい方法がある」とか皆さんも色々考えてみてください。そして感想や意見を投稿して頂けると幸いです。

先ず北信地域に自生している針葉樹について整理すると下記の表になります。

マツ科 モミ属 ウラジロモミ、シラビソ、オオシラビソ
ツガ属 ツガ、コメツガ
トウヒ属 トウヒ
マツ属 アカマツ、ハイマツ、チョウセンゴヨウ、ゴヨウマツ、キタゴヨウ
カラマツ属 カラマツ
ヒノキ科 ヒノキ属 ヒノキ、サワラ
ネズコ属 ネズコ(クロベ)
ビャクシン属 ビャクシン、ネズミサシ
スギ科 スギ属 スギ
イチイ科 イチイ属 イチイ
カヤ属 チャボガヤ
イヌガヤ科 イヌガヤ属 ハイイヌガヤ

種の同定に使える部分は、樹形、花、球果、冬芽、樹皮、葉と色々ありますが、樹形と樹皮は地域差や樹齢差や個体差によりバラツキが大きい。 花や球果は特徴的で良い判断材料だが何時もあるわけではない。そこで、一番頼りになるのが「葉」である。 針葉樹というからには全種類ともに「針の葉」じゃないか? ・・・・・・・・ごもっとも。 大雑把に見れば「針の葉」に間違いない。

しかし、細かく見ていくと結構色々なタイプに分かれている。タイプとしては写真1の「線形葉」、写真2の「針形葉」、写真3の「鱗形葉」の3つのタイプに分かれる。 線形葉の葉を持つものは、マツ科のモミ属、トウヒ属、ツガ属、イチイ科のイチイ属、カヤ属の5属。 針形葉の葉を持つものは、マツ科のマツ属、カラマツ属、スギ科のスギ属、ヒノキ科のネズミサシの3属1種。 鱗形葉を持つものは、ヒノキ科のヒノキ属、ネズコ属、ビャクシン属の3属である。

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写真1 線形葉 写真2 針形葉 写真3 鱗形葉

1. 属の同定

この3属は北信地方の主要な高木性の針葉樹です。 先ず属の見分けのポイントは葉の「葉柄」と「葉先」です。 (5倍~10倍くらいのルーペがあると便利です。特に私のような老眼には必要)

モミ属の葉柄は写真4のように葉身と葉柄の区切りが不明確で、かつ枝に着く部分が「蛸の吸盤」形になっている事と、葉の先端が凹型になっています。・・・・・モミ属の重要な特徴。

トウヒ属は写真5のように葉柄が枝に着く部分が「葉枕」と言う独特の形をしている事と、 葉の先端が尖っています。・・・・・・トウヒ属の重要な特徴。

最後のツガ属は写真6のように葉柄は葉身より明らかに細く明確に区分できる事と葉の先端が凹みます。

以上がマツ科のモミ属、トウヒ属、ツガ属の3属を切り分けるポイントです。

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写真4 モミ属(葉裏) 写真5 トウヒ属 写真6 ツガ属(葉裏)

2. 種の同定

次に後の2属の種の同定になる訳ですが、最初のモミ属にはウラジロモミ、シラビソ、オオシラビソの3種があり(北信地方には自生しませんがモミもあります)、ツガ属にはツガとコメツガの2種がある。

モミ属

モミ属のウラジロモミの同定は当年枝の先端部分の「縦しわ」です。 写真7のようにウラジロモミには「縦しわ」がありますが、シラビソとオオシラビソには写真8のように「縦しわ」はありません。 更に、シラビソとオオシラビソの区別は葉の着き方です。 当年枝の先端部を上から見たとき写真9左側のように葉に隠れて枝が見えないのがオオシラビソ。 写真9右側のように枝が見えるのがシラビソです。

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写真7 ウラジロモミ 写真8 シラビソ 写真9 オオシラビソとシラビソ

ツガ属

ツガ属には、ツガとコメツガの2種があります。この見分け方は、当年枝の毛です。 毛と言っても羊の様にフサフサとした毛が生えているわけではありません。 写真10の様に無毛なのがツガで、写真11の様に薄い毛が生えているのがコメツガです。 俗な言い方をすればツガは「女の脛」でコメツガは「男の脛」です。コメツガの生息地はツガより標高が高く寒いので毛深いのかも?(しかし、モミとウラジロモミの関係は逆で、標高の低いモミが男の脛で、標高の高いウラジロモミが女の脛です。どうしてでしょうかね?)もう一つの特徴は葉です。ツガの葉柄は葉身に対してほぼ直角に曲がりますが、コメツガの葉柄はそれ程曲がっていません。 球果の着き方も同様に、ツガは枝に対して直角に曲がり、コメツガは曲がらずに枝なりに着きます。

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写真10 ツガ 写真11 コメツガ

更に、全体の葉の着き方が写真12のように右側のコメツガは葉のサイズが揃って整然と並ぶにの対して左のツガはコメツガより大き目で葉のサイズにバラツキが大きい事です。

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12 ツガ(左側) と コメツガ(右側)

トウヒ属

北信地方のトウヒ属はトウヒの1種しかありません。

3. 補助情報

同定の精度をあげるための補助としては、樹皮と雌花と球果と生息地の標高があります。

[樹皮]

コメツガとウラジロモミとトウヒの樹皮は写真13のように割れてザラザラになっていますが、シラビソとオオシラビソは写真14のように平滑で所々に脂袋がプクッとふくれています。

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写真13 トウヒの樹皮 写真14 シラビソの樹皮

[雌花]

ウラジロモミは赤紫色、シラビソとオオシラビソは青紫色で共に上向きにつきますが、コメツガは茶色がかった赤紫色で下向きにつきます。

[球果]

サイズは小さい順からコメツガ(下向きで直径3cmの球形)、シラビソとウラジロモミ(上向で長さ5cmの円柱形)、オオシラビソ(上向で長さ10cmの円柱形)となっています。

[標高]

これら3属は標高によって生育する種が棲み分けを行っています。モミ属では低地帯はモミ、山地帯はウラジロモミ、亜高山帯はシラビソとオオシラビソで、 更にオオシラビソはシラビソの耐積雪タイプで日本海側気候の多積雪地帯に生育している。ツガ属は山地帯以下がツガ(北信地域には非常に少ない)、亜高山帯がコメツガとなっており、トウヒ属は山地帯にはハリモミやイラモミ(北信地域には自生していない)亜高山他にはトウヒが生育している。

参考

垂直分布の区分(標高は緯度によって異なるが、中部地方では以下の通り)

低地帯 500m以下(私の住んでいる長野市南堀)
山地帯 500~1500m(市民の森)
亜高山帯 1500~2500m(飯綱山、戸隠山、志賀高原)
高山帯 2500m以上(白馬岳、鹿島槍)

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