市民の森ながの

内田健一氏講演会 2008年1月27日(日)

「市民の森づくり」プロジェクトでは、人と自然との関わりを考え、 荒れてしまった里山を美しい山に戻すために何が出来るかを考え、活動してまいりました。
新聞、テレビなどで山の荒廃が報道され、 各地で森林整備ボランティアが組織されて里山への関心も高まっている今日ですが、 山の現状は好転しているとは言えません。
山は誰のものか。荒れた山は誰が元に戻すのか。 森林整備のボランティアはこれから何をしていくべきか。
今回はきこりの親方であり、また日本、ヨーロッパの林業の仕組みを比較し、 日本の山がおかれている問題点を鋭く指摘されている内田健一さんをお招きし、これから私達はどう山と向き合っていくべきか一緒に考えました。

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テーマ   : これからの森づくりと林業 ―欧州に学ぶ日本の課題―

講師    : 内田 健一 氏
森林・林業研究家 岐阜県立森林文化アカデミー元教授 長野県在住

主催    : ながの環境パートナーシップ会議「市民の森づくり」プロジェクト

後援    : 長野市森林整備課、長野地方事務所林務課

実施日時 : 平成20年1月27日(日) 13時30分~17時

参加者数 : 40名程度

講演内容 : 日本とスエーデン、オーストリア両国の林業の現状を比較し、林業に対する双方の
基本的な姿勢、作業現場、自然環境(特にスエーデンは夏冬の日照時間の差が大きい)、
地勢、労働環境等の違いを説明、これからの日本の林業の方向について示唆する。

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内田さんの講演を聴いて

赤羽 和春

技能者の減少は、即その産業の衰退につながる。

その意味で内田さんが強く訴える林業者の育成は、日本林業ひいては国土保全のために急務である。 当面の逃げとして、巻き枯らしとか薬殺がクローズアップされているが、邪道そのものである。 植物といえども、生きているのである。

日本は徳川300年で鎖国政策をとり、独自の文化と技法を育んできた。

明治になり、文明開化の掛け声の元に何のためらいもなく欧米文化を取り入れてきたが、ここで原点に立ち返り、官民あげて日本型を検討して実行すべきではないか。

気候風土の違いは、利点も有れば欠点もある。その地にあった手法を取り入れるべきと思う。

また、山林所有者の所在不明あるいは整備の意志が無いと言ったことで手つかずとなり放置されているために、 将来災害を引き起こすと思われる危険箇所が多数あると思われる。

憲法で保証される私有財産権を侵すことになるが、戦後の農地解放のような超法規的な処置も必要ではないか。

山林は個人のものであっても、崩落等が発生すれば大きな損害が発生し、その回復には多大な公費が投入されることになる。

治療より予防の方がはるかに安価で大きな効果が得られることは言うまでもない。

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内田先生の講演をお聞きして

金井 三平

日本の森林行政と北欧の森林行政を比較した講演は私をはじめ聴講者にショックを与えてくれるに十分すぎる講演でした。

森林整備は現場にこそある

日本の国土の67%が森林(国土面積の2/3)であり、これは世界でもトップクラスです。 戦後国策で植林されたヒノキ・杉の人工林は木材価格の低落で放置されたまま、 人工林は継続して手入れをしなければいけないのに林業で生計が立たない構造になってしまった。 北欧の林業は民間の企業が補助金なしで林業で十分やっていける、 日本は植林から補助金漬けの林業にもかかわらず林業を営む企業も人材も育っていないとのこと、 日本の国土にあった現場力の育成となる施策にこそ工夫こそが日本の林業を育て国土を守りCO2吸収の森林育成の解決の糸口では先進の北欧の林業に学ぶべき点があると強く感じさせられる講演でした。

スローライフを重視する北欧の文化

化石燃料の高騰と石油資源の枯渇を考えるとき30年くらい前の生活スタイルである薪や炭を使ったスローライフな生活スタイルも森林を守る一助かな、 多方面にわたっての森作りを考えさせてくれた講演でした。

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講評

渡辺 佳惠

事前のPRがやや不足しており参加者数は予想を少し下回ったが、 会場の設営は広い場所を適切にパーテーションで区切り、 講演時の机配置、質疑時の机配置、また、スクリーン設定等はうまく準備できた。

参加者の方々は、林業についてかなり関心を持っているようであり、松本など遠方から参加された方もいた。

講演内容については、スエーデン、オーストリア両国の現状報告がよく説明されていた。また、日本の現状について、国の姿勢、対応についての官僚主導、現場の意識等が理解できた。

質疑は活発に行われたが、もう少し議論を深めたかった点として、

  • 今後どのようにすれば日本の林業は産業として成り立つのか、補助金の使い道等を含めた議論。
  • オーストリアの地勢を考えると、その作業方法や技術が日本の現場へ応用可能なのか。
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