市民の森ながの

山仕事の道具の話2 「チェンソー」 2007/8/1 佐々木 政彦

最初にチェンソーを持ったときは正直怖かった。それまで山仕事などしたことはなく、ましてエンジン工具など使ったことがなかった。

たまたま実家に、庭の木を伐るために父親が購入したチェンソーがあった。 手入れされていないチェンソーは音だけ大きく、手鋸より切れない難儀なものだった。ソーチェンを研ぐことを教わり、なるほど手鋸より楽なものだとわかった。しばらく父親から借りたチェンソーを使っていたが、きこり講座などで見る、スエーデンのハスクバーナのスマートなデザイン、甲高い音にあこがれた。ドイツのスチールの無骨ながら道具に徹した機能美、男らしいデザインにいつかはこのどちらかをパートナーにしたいと思った。

知合いのアマチュア演劇の団員が、本業は農林機械の整備だと知って演劇公演の打ち上げの時にチェンソーの話を聞いた。 少し酒が入った彼は、ドイツ製スチールのすばらしさを饒舌に語っていた。 整備に自信のなかった私は、お抱え整備士付きでスチールを購入することにした。 小振りながらプロにも愛用者が多いといわれるMS200。 彼にはMS240を薦められたが、アマチュアが週末のきこりをするにはややオーバースペックだと思った。その代わり標準の35cmのバーを40cmにした。

整備士付きで買ったつもりだったMS200だが、購入以来一度も故障がない。 始動時、一度機嫌を損ねるとその後、うんともすんとも言わない気難しさがあるが、そんなことはごくまれだ。ほとんど機嫌よく始動してくれる。 心配した小排気量によるアンダーパワーも、高回転でパワーを発揮する本機の性格をうまく引き出してやれば、硬い広葉樹の大径木にも向かっていける。

言うまでもなくチェンソーは上手に研がれていることが一番重要だ。うまく研ぐことができなければ、どんなに優秀な機械でもバーベルとさして変わりない。バーベルを下げて何年か山に通い、何度も研ぎ方の指導を受け、ソーチェンを3回交換し、やっと目立てができるようになった。ここ数年、MS200は頼もしい相棒として、その性能をフルに発揮してくれている。

市民の森ながので購入した、新ダイワの1038は、トルク型のエンジン特性を持ち、エンジンのかかりも良い誰にでも使いやすいチェンソーだ。やや大きめの排気量で神経質に高回転を維持しなくても良く伐れる。 欧州製の機械とは思想が違うのか、これはこれで具合がいい。しかし機械、特にチェンソーは面倒を見続けて常に良い状態を維持しないと本来持つ力を発揮してくれない。 会の所有の機械はその点、コンディションの維持が難しい。やはり仕事道具は思い入れを持てる、自分の道具を持つべきなのだろうか。